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糖質制限ダイエット(ケトジェニック)~理論編~

Kaname
Kaname

ケトジェニックを始める前に、どういう仕組みなのか理論を理解しておいたほうがより効果的に取り組めますよ♪

ケトジェニックの概要

糖質制限?ケトジェニック?って何?

 はじめに、ここでの「糖質制限」とはケトジェニックのことを意図しています。ケトジェニックとは、糖質摂取量を制限しケトン体を主なエネルギー源とすることで体脂肪燃焼を優先し体重を減らすダイエット方法です。

 ケトジェニックを実施する際、不十分な知識のまま行うと体調不良や筋肉分解の要因になりますので、しっかりとそのメカニズムを理解した上で実施するのが効果的です。

ケトジェニックのメカニズム概要

 糖質の摂取量を総摂取カロリーの10%程度まで制限し、タンパク質と脂質を十分摂取することで体のエネルギー源が糖質から脂質に切り替わります(およそ16時間ほどで切り替わる)。この状態をケトーシスと言います。

 ケトーシス中、体のエネルギー源は摂取した脂肪分や体の中性脂肪から生成されるケトン体です。脂肪を直接エネルギーにすることで、どんどん脂肪を燃焼することができます。

 ケトジェニックの食材選びは低脂質食と比べると簡単です。肉や魚は、脂肪とタンパク質がセットになっていることが多く、糖質がほとんどないです。逆に低脂質食の場合は、低脂質で糖質とタンパク質が(良い割り合いで)セットになっている自然の食材はほとんどないので栄養素ごとに選ぶ必要があります。現代では糖質の高い食べ物が数えきれないほどありますが、その分、分かりやすいので食事管理もやりやすいでしょう。

ケトジェニックのメカニズム詳細

 ケトジェニックの生理反応は、「β酸化」→「ケトン体のエネルギー化」となります。それぞれ説明します。

β酸化

 まず、糖分がエネルギーになる経路は、グルコース(糖分の最小単位)が解糖系を通り、TCAサイクル(クエン酸サイクル)という回路がまわりATP(エネルギー)の生成となります。TCAサイクルが円滑にまわることにより、多くのATPを産生します。つまりこれが消費カロリーとなります。

 このとき糖分の摂取をやめるとどういう経路になるでしょうか?グルコースがないと解糖系が働かないため、TCAサイクルを回せません。すると、体内の筋肉を分解してアミノ酸からグルコースを作り(糖新生)、解糖系→TCAサイクルという順路になります。

 通常はこのような経路になりますが、このとき脂質を十分に摂取しているとエネルギーのメイン経路が変わります。脂質の脂肪酸がアセチルCoAというTCAサイクルを動かす起点となる物質に変わり、これをβ酸化といいます。β酸化により脂肪をエネルギーとする経路になります。

ケトン体のエネルギー化

 TCAサイクルを動かすためにはアセチルCoAとオキサロ酢酸の2つの物質が必要です。β酸化により、大量にアセチルCoAが作られますが、オキサロ酢酸が足りません。そこで、肝臓で余剰のアセチルCoAがケトン体に変えられます。(アセチルCoAはそのままでは血中で流せないため、水溶性のケトン体に変換される)ケトン体は水溶性のため、脂肪酸と違い体内の組織(脳を含む)に効率よく運ばれます。(脂肪酸の運搬についてこちらで解説)そして様々な組織に入り、ケトン体は分解酵素(スクニシニルCoAトランスフェラーゼ)によりアセチルCoAとオキサロ酢酸に分解されます。この酵素の力により、不足していたオキサロ酢酸が補填され、TCAサイクルが円滑に回るようになります。

 その他、アスパラギン酸やグルタミン酸などのアミノ酸もオキサロ酢酸の生成を手伝います。また、筋肉が多い人ほどケトン体の分解酵素が多く、ケトン体をエネルギーに変換しやすくなっています。糖新生による筋分解を抑え、脂肪燃焼効率を上げるには、ケトジェニックと並行して筋トレを十分行うことが重要です。

体脂肪が燃焼する他の要因

 他にも、糖質制限によりインスリンの分泌を抑えられることがあげられます。インスリンは、脂肪合成の作用があるのでそれを抑制することで脂肪燃焼を助けます。(インスリンについては別記事で解説)

 また、アディポネクチンの作用もあげられます。ケトーシス状態の場合、アディポネクチンが増加する傾向があります。アディポネクチンの働きによって体内のエネルギー化が早まり体脂肪が燃焼されます。低脂肪食に比べ倍以上の燃焼効果があったという報告があります。(アディポネクチンについて別記事で解説)

ケトジェニックの信頼性

ケトジェニックのダイエット効果

数多くの研究をまとめて分析する最も信頼性の高い「メタ・アナリシス」からダイエット効果を確認します。

  • 低糖質ダイエット群(1日の糖質摂取量50g以下)は体重の減少が低脂肪群よりも大きく、中性脂肪や血圧が低下していた。
  • 肥満女性371名を対象に12か月間にわたって1400~1800kcalのカロリー設定をしてダイエットした結果、
    ・低糖質(カロリー比17%が糖質)群は4.7kgの体重減少
    ・ゾーンダイエット(カロリー比40%が糖質)群は1.6kgの体重減少
    ・低脂肪(カロリー比10%が脂質)群は2.2kgの体重減少
    ・カロリー制限と運動群は2.6kgの体重減少
  • 322名を対象に2年間わたって行った研究では、
    ・低脂肪群は、2.9kgの体重減少(総コレステロールは12%減少)
    ・地中海式ダイエット群は4.4kgの体重減少
    ・低糖質群は4.7kgの体重減少(総コレステロールは20%減少)

これらのエビデンスから、糖質制限によるダイエット効果は確かにあると考えられます。

ケトジェニックの脳への影響

 体内でケトン体を増やすことにより、認知機能の向上、うつやPTSDの症状改善につながります。また、アルツハイマーの改善効果があったことが報告されています。

 しかしながら、WEBの一部のダイエット記事では、糖質は脳の唯一のエネルギー源であり糖質を摂らないと集中力が低下し判断力が鈍るなど脳への弊害のリスクを訴えるものもあります。

 これは本当でしょうか?脳機能について、以下のような研究があります。

 軽度の認知障害を持つ23名を対象に、総カロリーの50%を炭水化物にした群と5~10%を炭水化物にした群で比較したところ、後者の低炭水化物群の方が記憶力テストで良い成績を出しケトン体レベルが記憶力に良い影響を及ぼしたと報告されています。

 そもそも、糖質が脳の唯一のエネルギー源ではなく、ケトン体も血液脳関門を通過できるためケトン体を脳のエネルギー源することができます。ケトーシスの場合、脳のエネルギー依存度はケトン体が60%、糖新生によるブドウ糖が40%になるとされています。

 さらにインスリンにはアルツハイマーの原因となる炎症作用を増やすことが分かっており、その悪影響をケトーシスにより避けられるため、脳に良い影響を及ぼすと考えられています。

ケトジェニックの注意点

 ケトジェニックを実施するにあたり、注意点を説明します。

  • 巷で「ゆるい糖質制限」とか「プチ糖質制限」などというやり方も存在しますが、そのほとんどがケトーシス状態にならず、筋肉などのタンパク質が分解される糖新生が活発になります。このような中途半端な糖質制限は、筋肉を分解するだけでなく、糖新生は効率のより回路ではないため、低血糖になり、めまいや倦怠感、体調不良の原因にもなります。実施する場合は最初からケトジェニックのPFCバランス(3:6:1)を考えて実施しましょう。
  • また、ケトジェニックにおいて、脂質が十分でないとケトーシス状態になりにくくなります。前述のメカニズムの通り、ケトーシスになるためには脂質からβ酸化を起こす必要がありますので、脂質不足には十分注意しましょう。
  • 健康的にケトジェニックを進めるために、摂取する脂肪の種類にも目を向けましょう。(脂肪酸の種類と特徴についてこちらで解説)なるべく、長鎖脂肪酸を避け、中鎖脂肪酸や不飽和脂肪酸の摂取を心がけましょう。特にMCT、オリーブオイルや魚油を中心に摂ると良いです。また、脂質の酸化を防ぐためにもビタミンEを同時に摂取することをお勧めします。
  • 人によってはケトーシスになりにくい場合があります。これは普段から高脂質食をしていない場合、腸内細菌が脂質代謝に適用できないことがあります。これはケトジェニック食を半年以上継続していれば腸内細菌の環境も変わり適用できるようになってきます。あるいは、イヌリンを摂取すれば腸でフラクトオリゴ糖に分解され脂質代謝を得意とする腸内細菌のエサとなり腸内環境を改善できる可能性があります。(イヌリンについてこちらで詳しく解説)
  • ケトジェニック中は、体内のグリコーゲンが減るとともに水分も抜けやすくなります。すると便が固くなることがありますので、腸内環境を日頃から意識する必要があります。十分な水分摂取とともに不溶性食物繊維:水溶性食物繊維=2:1の割り合いで摂取することが望ましいです。不溶性はキャベツなどの葉物野菜、水溶性はわかめなどの海藻類に多く含まれます。また、納豆やオクラなどネバネバしたものも整腸作用があるのでおすすめです。
  • ケトジェニックを長期間続けると、糖代謝能力が低下し、インスリンの分泌能力が低下します。インスリン感受性が弱った状態になりますので、ケトジェニック後に、通常の食事に戻すと糖分を処理しきれずリバウンドすることがあります。(水分やグリコーゲンによる体重増加も含まれますが)(インスリンについてはこちらで解説)糖質を増やす場合は、インスリン感受性もともに回復させる必要があります。徐々に炭水化物を増やすか、低脂質食に切る変えるなどして血糖値上昇を緩やかにしてあげしょう。または、こちらで紹介しているサプリメントでインスリン感受性を高めることもできます。

<ケトジェニックを行ってはいけない方>
 糖尿病患者の場合、インスリンが正常に働かないため血中のケトン体増加に伴い糖新生により血糖値が上がり脱水症状を引き起こし「ケトアシドーシス」という血液が酸性に傾く状態なる可能性がありますので注意が必要です。また、低血糖発作を起こす可能性もありますので、糖尿病や膵臓、肝臓、腎臓等に問題がある方は必ず医師の指示に従いましょう。

ケトジェニック食の進め方

 それで実際ケトジェニックを始めるにあたり、どのような食事を摂れば良いでしょうか?

 ケトジェニックをする場合のカロリー摂取比率は脂質60%、タンパク質30%、糖質10%にしましょう。つまり、日々の食事についてどの食品がどの程度の栄養素を含んでいるのかカロリー計算をする必要があります。最近では、カロリーやPFCの計算ツールが増えていますので、それらを利用していきましょう。慣れてくれば計算せずとも目測ができるようになってきます。(追伸:日々の記録用ではないですが、目標とするPFCバランスを計算するツールを作成しました!こちらからどうぞ)

 次に注意するのが、しっかりと「脂質」を摂取することです。前述した通り、十分な脂質を摂取していないとケトーシス状態になりません。ケトーシスになれなければ、筋肉が分解されエネルギー化されます。つまり、筋肉が落ちてしまうのです。脂質は何でも良いのではなく、良質な油から摂ることを意識しましょう(良質な油について別記事で解説)

 そして、ケトジェニックを始める際には、徐々に糖質を減らすのではなく、一気に糖質カットに切り替えなければなりません。徐々に糖質を減らすと低血糖になり筋肉が分解する糖新生が活発になってしまうため、いかに早くケトーシスの状態に持っていくかが重要になります。

最後に

 正しい知識に基づきこのケトジェニックをやり遂げられれば、体重減少だけでなく副次的に多くの事を学ぶ事ができるでしょう。経験としてケトジェニックを実行することも十分メリットがあると思います。ケトジェニックダイエットは注意点が多く難易度が少し高めなので、最初は知識のあるトレーナーや栄養士、医師と相談しながら始めることをお勧めします。

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