02_ボディメイク0203_生化学・生理学

若返り研究最先端!その② 「今すぐできる老化を治す方法」(要約)

その①「老化の原因」の続きになります。

老化は病気である

 老化が病気だなんておかしな考え方だと、読者がそう思うのも無理はない。年をとれば老化するというのが、昔からいわれてきたことである。研究者や医師も、死因の直接的な原因(心臓病、糖尿病や認知症など)こそ憑りつかれたかのような細かさで分類し、公文書に記録している。老化自体に焦点があたっていないのだ。そうした病気すべての最大の原因は老化だというのに。例えば、誰かが崖から落ちて亡くなったら、なぜ落下したのかを突き止めることに必死になるが、そもそもどうして崖まで行ったかに焦点があたりにくい。私たちを断崖絶壁まで追い詰めるのは老化だ。

 5万年前と比べて私たちは平均寿命を大きく延ばしてきた。だが、最大寿命は5万年前と変わっていない。そして、平均寿命の伸び率に「健康寿命」が追い付いていないのだ。これは先進医療により、延命する技術は発展したものの、健康である期間をあまり延ばせていないということを示している。1つの病気を食い止めたところで、別の病気になる確率が低くなるわけではない。化学療法はある種のガンを治療できる一方、体の別の個所にガンがかかりやすい状態にしてしまう。まるでモグラ叩きのようだ。だからこそ、個々の病気を治療するという現行の対処法ではうまく行かないのである。高額な医療費がかかるうえに、健康寿命を延ばすこともできない。

 老化を病気と認めれば私たちは老化との闘いに勝利できる。過去を振り返ると、老化をいい表す言葉や定義は「避けては通れないもの」という一点につきる。闘いが始まる前にタオルを投げ込むどころか、闘いがあるのも知らないうちにタオルを投げ入れている。だが、闘いは現に存在し、老化は1つの病気であり治療できる確信がある。

今すぐできる老化を治す方法

食事

カロリー制限

 動物実験を経て、人間を対象とした数々の観察研究で、体の健康な機能を保つ必要最低限の食事に制限することで健康寿命を延ばせることがわかった。

 100歳以上の住民が多いことで知られる沖縄で生体エネルギーを研究する香川靖雄が1つの発見をした。本土と比べ沖縄人の平均摂取カロリーが20~30%程度低かった。そして、脳血管系疾患、悪性腫瘍、心臓病が非常に少なく、健康寿命が長かったのだ。

 また、アリゾナ州のドーム内生活実験では2年間にわたり住人がカロリー制限を続けた結果、カロリー制限で長生きさせたマウスと同じように生体内変化を確認できた。

 デューク大学の研究チームが145人の成人を対象に、2年間、推奨されるカロリーより25%少ない食生活を続けてもらい(人間なので実際には平均12%減に留まった)、それでも生体指標から老化のペースが落ちていることが確認された。

間欠的断食

 カロリー制限にこだわる必要はなく、むしろこちらのほうが効果が高いかもしれない。「間欠的断食」とは、食事の量は普段と変えないものの、食事を抜く期間を周期的に差し込むというものである。

 ある研究では、被験者は通常の食事を摂りながら、月に5日だけカロリーを大幅に制限した。すると、体重、体脂肪、血圧の減少などいくつもの健康効果が現れた。

 ギリシャのイカリア島(人々が死ぬことを忘れた島と呼ばれる)では、島民の3人に1人が90歳を超える。ほぼ全員がギリシャ正教会の敬虔な信者で、宗教上の理由から1年の半分あまりは何等かの形で食事を制限している。

 別の長寿のホットスポットでもある中国南部の巴馬ヤオ族自治県では、その地域に暮らす100歳以上の多くは、朝食を摂らず昼頃に食事を少量口にし、夕暮れになって最後の食事をする。

 こうした長寿地域を調査したり、様々な研究の結果、その多くは「間欠的断食」のかたちをとるということ。一定の時間だけ体を飢えさせる。現時点で人気のある方法では、昼と夜に食事をする(16:8ダイエット)や、週に2日はカロリーを75%減らすもの(5:2ダイエット)がある。栄養失調にならない程度の間欠的断食は、長寿遺伝子を活性化することにつながる。

アミノ酸を制限

 ここまでは、食べる量や頻度を制限することであったが、次に何を口に入れるかを気にしなければならない。アミノ酸を摂取しないと、私たちは短期間で死ぬ。人体のあらゆるタンパク質を組み立てる材料だ。最低限のタンパク質は摂る必要があるという上で、何を口にするかその種類を選択しなければならない。

 動物性タンパク質にはマイナス面があり、赤身肉などに偏った食生活をしていると、心血管系疾患による死亡率とガンの発症率が共に高まることが数々の研究で報告されている。特に加工した肉を食べるのは危険。ハムやベーコンなどは美味しくても、恐ろしく発がん性が高い。何百という研究で、結腸・直腸がん、すい臓がん、前立線がんとの関連が確認されている。

 代わりに植物性タンパク質を摂れば、全死因死亡率が著しく下がることが複数の研究によって示されている。植物性タンパクでは一部のアミノ酸が不足していたりする。それがかえってサバイバル回路を作動させるのに丁度良いストレスになる。アミノ酸の摂取を控えることで、mTORを働かせないようにし、オートファジーに振り向ける。古いタンパク質の再利用により、細胞の盛んな活動を抑え厳しい時期を乗り切ろうとすることが、健康寿命を延ばすことにつながる。

 他、特にmTORを活性化させる働きをもつアミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)。中でもロイシンは筋肉を増強することで知られ、ボディビルダーが良く飲むプロテインドリンクにも大量入っているが、長い目でみれば長寿のメリットが得られなくなるおそれがある。研究で、ロイシンを含まないエサをマウスに与えたところ、わずか1週間で血糖値が大きく下がることが確認された。血糖値は健康状態が改善したことを示す重要な目安だ。

 ただ、低タンパク質で野菜中心の食事を心がけて長生きしたとしても、それだけでは寿命を最大限に延ばすことにはならない。体にとってのストレスを栄養面で作っているだけだからだ。長寿遺伝子のもてる力をすべて発揮させるには、物理的なストレス(運動)を加えてあげる必要がある。

運動

継続的な運動

 様々な運動習慣をもつ数千人の成人を対象に血液細胞のテロメアを調べた結果、頻繁に運動をする人ほどテロメアが長かったのである。2017年に発表されたある研究によれば、よく運動をする(1日最低30分のジョギングを週5日行うに相当)人は、座りがちな生活をする人よりテロメアが長く、その長さは10歳ほど若い人と同等だった。運動をするとNADの濃度が上昇し、それがサバイバル回路を刺激して、AMPK、mTOR、サーチュインといった長寿関連の物質がプラスの方向に調整される。新しい血管を作り、心臓や肺を健康にし、体を丈夫にし、くだんのテロメアを長くするのだ。

 何時間も休みなしに運動する必要はなく、毎日15分足らずのランニングだけでも、心臓発作で死ぬリスクが45%減り、全死因死亡率が30%下がることが示されている。これは絶大な効果だ。5.5万人を対象にした15年にわたる観察研究でも研究者の予想通りジョギング習慣がある人は各段に死亡率が低かった。

 にもかかわらず、66歳以上では実際にこのような運動を実践しているのは10%にすぎない。1日に5~10分程度軽くランニングするだけの人でも、座位中心の人より数年長く生きられるのに。

理想の運動強度

 長寿遺伝子の力を余すことなく発揮させるには、強度が間違いなく大事になる。メイヨー・クリニックの研究チームは、いくつかの年齢集団において異なる種類の運動の効果を調べた。その中で最も長寿遺伝子を活性化させたのが「HIIT(高強度インターバルトレーニング)」である。高齢の被験者ほど、HIITによる活性化効果が大きかった。HIITは、最大心拍数の70~85%を断続的に行う強度の高いトレーニング方法で、この低酸素応答の状態が、体に適度なストレスを与え、サバイバル回路に良い刺激を与えてくれるのだ。

FAQ

 「好きなだけ食べても、走れば余分なカロリーを落とせますか?」

 答えはNO!ラットの実験でもその寿命延びは微々たるもの。逆でも同じ(カロリー制限して運動しない)。両方を組み合わせて初めて意味を為すのだ。

寒冷刺激

 恒温動物が、体温を一定に保てる環境温度の範囲を超えると、体内では様々なことが起こる。呼吸のパターンが変わり、皮膚へ向かう血流や心拍数が上下する。この反応は単純な理由ではなく、根本には遺伝子の働きにより体の均衡を保っている(ホメオスタシス)。とりわけ気温が低いときにそれは顕著に現れ、サバイバル回路を活性化するに至る。スクリプス研究所のチームが、遺伝子操作によってマウスの体温を通常より約0.5度低くしたところ、メスでは寿命が20%長くなり、オスでは12%延びた。このとき鍵を握るのが褐色脂肪細胞の活性化である。

 褐色脂肪細胞にはミトコンドリアが豊富含まれており、その量は年齢ととに減少する。体内に褐色脂肪細胞を多く含む動物や、毎日3時間ずつ震える寒さにさらされた動物は、ミトコンドリア内のサーチュイン酵素の量が多いことが確認されている。しかもそうした動物は、糖尿病や肥満やアルツハイマー病になる確率が極めて低いことが示されている。度を超えての実践は逆効果だが、鳥肌が立つ、歯がカチカチ鳴る、腕がふるえるというのは、危険なサインではない。褐色脂肪細胞をつくるペースを上げるには、寒い中運動するととりわけ効果が高いようである。

 では、高温に関してはどうかというと、寒冷刺激ほどではないものの、一定の効果を出している。ある研究では、フィンランド東部に住む中年男性2300人あまりを約20年にわたり追跡調査した結果、頻繁にサウナを利用する人(最高で週7回)は、週1回の人より、心疾患の発症率や心臓発作で命を落とす件数、さらには全死因死亡率がおよそ2分の1だった。

 いずれにしても私たちは、快適な温度で生活するばかりでは体のためにならないということである。

タバコや放射線など

 度を超えた長寿遺伝子へのストレスは、DNAへの損傷が激しくなり老化を早める原因になる。

 まずは、タバコである。喫煙とは有害な化学物質を何千種類も混ぜ合わせて毎日体に取り込むことにほかならない。喫煙によって生じるDNAの損傷は強烈で、老化のスピードを確実に早める。さらに副流煙にはDNAを傷つける物質の濃度が非常に高いので、周りの人への迷惑にもなりかねない。

 次に紫外線やX線、ガンマ線などの放射線は、DNAを損傷させる。病院で診断や空港のスキャン、フライトなど避けられない場合もある。

 他にもプラスチック容器に含まれるPCBという物質がDNAを傷つける。コンビニ弁当を電子レンジで加熱しようものならより一層PCBが放出される。亜硝酸ナトリウムで処理された食品(一部のビール、塩漬けや燻製にした肉、ベーコンなど)は、発がん性をもち、DNAをも切断する。車の多い都市部では息を吸うだけでもDNAを傷つけるのに十分だ。

 生活する上で全部避けるのは到底無理な話で、DNA損傷からは逃れらない。だから老化が進むのだ。大事なのは、DNA損傷よりも、損傷を修復させるための行動を起こすことである。

 すでに体が衰えているためにカロリー制限が出来ず、走ることもままならないという方はもう手遅れなのだろうか。いや、そんなことは全くない。老化がかなり進んでいる人も含めて誰もが長く健康に生きようとするなら、少しばかり手助けがいりそうだ。


トレーナーKanameの筋肉翻訳

Kaname
Kaname

またまた、要約が長くなってしまいました。言い訳すると、結論だけ伝えても本当にソレ信じますかというのが私の中にあるからです。「絶対儲かる方法があるんです~、えへへ」といっているようなもの。最低限の理論、エビデンスは不可欠ですよね。そこから何より「自分で考えること」が最も大事だと思っています。

ガチャ丸<br>こぶん
ガチャ丸
こぶん

ですよね~。

食事について

 まず、トレーニー目線で、食事の進め方について意見を言わせて頂きたい!

 食事について、望ましいであろう食事は、思想は全く異なりますがヴィーガン食によく似ていますね(ヴィーガンについて別記事で解説)。カロリー制限や間欠的断食には同意ですが、アミノ酸の制限については、少し腑に落ちない点があります。

 加工肉が危険というのは論じるまでもない真実ですが、動物性タンパクが一概に悪いとは決めつけられないと思います。中でも鶏肉、乳製品、魚は植物性タンパクと比べ、ガンや循環器系の死亡率はさほど変わらないことがコホート研究で示されています。赤身肉とはいっても、牛や豚にはそれなりに脂肪が含まれているわけで、飽和脂肪酸の悪影響も少なからずあるのではないでしょうか(悪い脂肪酸について別記事で解説)。

 また、魚についてはあまり言及されていませんでしたが、日本人の魚摂取による大腸がんリスクが有意に減少するメタアナリシスの結果や膵臓がんリスクが20%低下したというコホート研究の結果など数々のエビデンスで健康へのメリットが示されています。これは魚に含まれるオメガ3脂肪酸が体に良い働きをしてくれているからです(魚の脂のメリットについてこちらこちらで解説)

 カロリーの低い植物性と平均的に高い動物性タンパクを単純に比べたら、動物性に分が悪いのは仕方ないことです。だからその内訳が大事なんだと思います。牛肉ばっかり毎日食べていれば、そりゃ死亡リスク上がってしかるべきです。それ以外の魚介類や乳製品、低脂肪の鶏肉、そして大豆などの植物性タンパクをバランス良くとっていれば長寿においてさほど悪い影響はでないのではないかと思います。

 アミノ酸を制限し、サバイバル回路を刺激するということについてですが、これってそんなに重要なことなの?と思います。特段、アミノ酸を制限しなくても、カロリー制限すればサバイバル回路を刺激できるので、タンパク質だけ下げるなんてちょっとナンセンスじゃないかなぁ。オートファジーなんかに頼ると筋肉落ちちゃうよ。

 それに必須アミノ酸の一部を除けばアミノ酸スコアが下がり、利用できるカロリーが低下するから健康指標が改善されているに過ぎないのでは?アミノ酸の摂り過ぎにより、サバイバル回路に適度なストレスが与えられないことはわかるけど、トレーニーであれば一般の人より筋肉量がある分、アミノ酸プールもアミノ酸利用率も高いので、過剰でなければ増やしてOKだと思いますよ。(過剰に摂ることはよくないなぁということには認識を改めました。筋肥大において男性では体重の2.5倍が最も良いというエビデンスがあるんだけど、2倍ぐらいにしておくか。厚生労働省推奨量じゃぁ絶対足りないぜよ。。ボソッ)

 シンクレア教授は、きっと筋トレしていない人向けに言ってるんだろうなと思いました(当たり前だ)。それなら納得です。でも、DIT(食事誘発性体熱産生)とか筋肥大、それによる代謝向上(トレーニー限定)とかタンパク質摂取メリットって結構大きいのになぁ。というか筋肥大するにはmTOR刺激を最大化する食事やサプリメントが欠かせないんだけれども。シンクレア教授!mTOR活性化だけは許してくれないでしょうか!?お願いします!

ガチャ丸<br>こぶん(教授)
ガチャ丸
こぶん(教授)

許します。キリッ

運動について

 運動習慣については、論じるまでもないです。理想の運動強度はHIIT!きたこれ。めっちゃキツイやつですね。シンクレア教授!良いのもってきましたねぇ~♪減量期にHIITさんには大変お世話になっております(ニュアンスおかしい?)。でも、ウェイトトレーニングも持ってきて欲しかったよ~。非常に近しいけれども。筋肥大の効果についてももっと興味もって欲しいなぁ~。ていうか結局、mTOR活性化させてるじゃん。食事では抑制するけど、運動では活性化させたいってどういうことよ(笑)

寒冷刺激について

 私の別記事にも載せておりますが、男性は40代以降、褐色脂肪細胞が極端に減少し、太る原因の1つになっています。継続的に寒い早朝ランニングして、その後サウナに入るなどすると長寿効果が高いのではないでしょうか。

タバコや放射線などについて

 紫外線が悪いのは知っていたけど、ボディコンテストで勝つためには日焼けが必要なんですよね~(泣。日サロの場合はUT-B(しみ、そばかすの原因)は放射されないからまだ太陽光よりマシではあるんだけれども。

Kaname
Kaname

高齢で動く体力もありませんという、そこのアナタ。諦めてはいけません。シンクレア教授は、万人に向けて老化を治すといっています。

次回は「薬やサプリメントで老化を治す」お楽しみに~!

参考文献:LIFE SPAN 老いなき世界

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