低糖質食のやり方について、具体的にどのような食材を使えばよいのか、どんなことに注意すれば良いのかなどを詳しく解説します。(ケトジェニック理論を事前に読んで頂くことをお勧めします)
※糖質制限によるケトーシス状態を目指すため、ここでのローカーボ、低糖質とは、ケトジェニックと同義とします。
<低糖質食のポイント>
- 総摂取カロリーよりも糖質量を守ることを優先!
- 目標PFCバランスを守る(こちらで計算できます)
- タンパク質は絶対量!
- 良質な脂質をしっかり摂る!
- 食物繊維を十分摂る!
- 栄養成分表示ラベルのチェック習慣化
<低糖質食の概要>
この食事法は、低脂質食や通常の食事とエネルギー回路が異なり、糖質ではなくケトン体がエネルギー源に変わります(およそ16時間で切り替わる)。目標PFCバランスをもとに糖質量を制限することと、エネルギーの材料である脂肪が十分摂れていることがダイエットを成功させるポイントになります。それらが不十分だと、筋分解や体調不良の原因になります。
糖質は意識せずともいろんな食品に少なからず含まれていますので、まずは糖質がありそうなものを断ち切る気持ちが大切です。ここが守れないとケトジェニックでは無くなりますので、多少総摂取カロリーがオーバーしても良いので、糖質量は守りましょう。(ケトーシスであることが優先)
炭水化物は糖質+食物繊維の総称ですが、この食物繊維の摂取が減ると腸内環境が悪くなり、お通じにも影響するため、工夫して摂取する必要があります。
脂質は、油(脂)であれば何でも良いわけでなく、良質な脂質を選びます。どのようなものが良質なのか紹介していきます。
加工食品や調味料などの商品を選ぶ際は、糖質量に問題がないか成分表示ラベルを確認する習慣を身につけることも大切です。
<低糖質食の推奨食材>
タンパク質(P:プロテイン)+ 脂質(F:ファット)
タンパク質と脂質はセットで考えて、加工食品ではなく食材から摂るように心がけましょう。
<食材例>
- 肉類・魚介類全般・・・低脂質食と異なり、肉や魚の種類に厳しい制限はありません。青魚系は中性脂肪を下げるオメガ3脂肪酸(EPA/DHA)が多く含まれています。牛肉や豚肉は良質なオレイン酸が含まれていますが、コレステロール値を上げる飽和脂肪酸も多いので肉だけに偏らないように気をつけましょう。
- 卵・・・栄養素のバランスが良くコスパが良い食品。生だとタンパク質の吸収率が悪いので加熱することをお勧めします。
- 納豆などの大豆食品・・・大豆にはバランスよい良質な脂が含まれています。納豆には整腸作用もあります。特に高野豆腐は糖質が非常に低いのでお勧め食品です。
脂質(F:ファット)
脂質を十分摂取するには肉や魚だけでは足りないことがありますので、脂質を多く含む下記の食材も取り入れていきましょう。
- アボカド・・・主にオレイン酸が多く、ビタミンEも豊富で抗酸化作用があります。
- ナッツ類・・・クルミはα-リノレン酸など良質な脂質が多く、アーモンド、ピスタチオはタンパク質も豊富です。ナッツ類は、持ち運びしやすいので間食にも便利ですね。
(オイル系)
- MCTオイル・・・100%中鎖脂肪酸で消化吸収が早く、ケトン体のエネルギー化が早いです。速やかにケトーシス状態にするための必需品。1日10gを目安に小分けにして少しづつ摂ることから始めましょう。慣れてくれば1日30gまで増やして問題ありません。
- ココナッツオイル・・・50~60%程度が中鎖脂肪酸。ココナッツの香りが強いです。お通じに困っている時に摂ると改善が見込めます。コーヒーなどに溶かして摂ると良いです。加熱も可。
- オリーブオイル・・・オレイン酸が豊富な酸化に強いオイルです。加熱調理をする際に向いています。
- アマニオイル、えごまオイル・・・オメガ3脂肪酸が豊富に含まれている必須脂肪酸が多い良質な油です。ドレッシング作りにも使えます。酸化しやすいので保存には気をつけましょう。
炭水化物(C:カーボ)
総摂取カロリーの10%程に抑えるため、例えば摂取カロリーが1500kcalの場合、150kcal(糖質38g)に制限することになります。これは、おにぎり1個分に相当し、しっかり糖質を制限しないと簡単に超過してしまいます。糖質が基本的には、糖質を含む食品を控え、PFCを計算して余裕があるようであれば糖質摂取して問題ありません。ただし、小分けではなく1回にまとめて摂取をお勧めします。(ある研究では、糖質制限において、摂取可能な範囲の糖質を小分けで食べるよりも1日1回にまとめて摂取したほうが体重、体脂肪の減少が大きくなりました。これは糖質を摂取していない時間が長くなることにより体脂肪燃焼効果が高まったと考えられます)
コンビニなどを利用する際は、1品の糖質量5g以下であることを目安とします。成分表示は「糖質」表示がなく「炭水化物」と記載されている場合は、炭水化物量で判断しましょう。
野菜・海藻・きのこ、果物
芋類やかぼちゃ、れんこん、にんじんなどの糖質の多い根菜類を除き、野菜は全般OKです。海藻やキノコ類も全般OKです。特にケトジェニック中は、便通が悪くなることがありますので、ワカメやもずくなどの海藻類や葉物野菜を積極的に摂りましょう。ただし、野菜ジュースはNGです。野菜のメリットである食物繊維がほとんど入っておらず、糖質が高めのため気をつけましょう。食物繊維は、イヌリンやオオバコなどのサプリメントを利用すると摂取が便利になります。
果物は、摂取可能な糖質の範囲内であればOKです。参考に低糖質な果物の糖質量を記載します。
- ラズベリー(10粒)・・・3g
- イチゴ(中サイズ)(5個)・・・5g
- ブルーベリー(20粒)・・・5g
調味料
ドレッシングは、自前で作ることをお勧めします。オリーブオイル、レモン果汁、塩だけでも十分使えます。市販のものであれば、マヨネーズも使えますし、青じそドレッシングなどの低糖質なドレッシングもあります。市販を利用する場合は、糖質量チェックを忘れないようにしましょう。
調理で甘味をつけたい場合は、天然甘味料の「ラカント」をお勧めします。(ラカントのメリットについてこちらで解説)
また、「酢」(リンゴ酢、ザクロ酢、黒酢など)は、炭水化物消化酵素の働きを阻害するため血糖値の上昇を抑えたり、中性脂肪を減らす実験結果もあります。酢は、食事と一緒に摂ると良いです。そのまま飲むと胃に負担がかかるため、料理の調味料として、または水や炭酸水などで割ると良いでしょう。市販で加工された飲むお酢などは、糖質がたっぷり入っていることが多いので気をつけましょう。
おやつ、おつまみ
- ナッツ小袋を積極的に活用しましょう。大袋は食べ過ぎる可能性もあるので、定量が便利です。
- サイリウム粉末(オオバコ)とおからパウダー、ラカントを利用すると蒸しパンやおモチのようなものも作ることができます。(アレンジは、クックパッドなど参考にしてください)
- スルメイカや食べる小魚などのタンパク源も活用しましょう。筆者のオススメは、ピクルスのスライスとノンオイルツナ缶を和えたものです。タンパク源と酢が同時に摂れます。
- チーズもOKですが、飽和脂肪酸が非常に多くコレステロールを上げるリスクがあるので、食べ過ぎには注意しましょう。(飽和脂肪酸のリスクについてこちらで解説)
- ゼロカロリーのゼリーや飲料水(ダイエットコーラなど)を活用できます。ただし、人工甘味料には食欲増進作用があるので摂り過ぎには気をつけましょう(人工甘味料のデメリットについてこちらで解説)
- 基本的にベーコンやソーセージ、(低糖質の)お菓子やケーキなどの加工食品は最小限にしましょう。これはダイエット方法に限らず、健康へのリスクがある食品添加物やトランス脂肪酸の体内への蓄積を防止するためです。
おすすめのサプリメント
- イヌリン・・・キク科の植物から抽出した水溶性食物繊維。善玉菌のエサとなり腸内環境を改善。脂質代謝を向上させケトーシス状態維持をサポートします。1日9g程度を食前に小分けで摂ると良いでしょう。
- ビタミンE・・・抗酸化作用があるため脂質の酸化を抑制できます。高脂肪食では摂った方が良いでしょう。1日400IUが目安となります。合わせてビタミンCも摂取すると抗酸化力がさらに高まります。
- フィッシュオイル(EPA・DHA)・・・魚があまり摂れていない場合は、オメガ3をサプリメントから摂ることをお勧めします。1日に2g(EPA+DHA)程度摂れると良いです。
- プロテイン・・・時間がない場合にはプロテインを活用しましょう。プロテインを選ぶ際は、なるべく糖質が入っていないものにします。ただし、DIT(食事誘発性体熱産生)の点でプロテインパウダーより固形食が優れていますので、時間があるときはなるべく固形のタンパク源を摂りましょう。(DITについてこちらで解説)
その他、インスリン感受性を高めるこちらで紹介しているサプリメントもオススメです。
水
ケトーシス状態では水分が抜けやすい状態になり、便が固くなってしまうことがあります。これを予防するために男性では3リットル、女性では2リットルを目安に小まめな水分摂取を心がけましょう。なお、コーヒーは飲んでも問題ないですが、カフェイン作用で水が抜けやすくなりますので、水分摂取にカウントしません。食事に味噌汁やスープなどを付け足すなど工夫していきましょう。
<摂取タイミング>
血糖値の上昇をゆるやかにするため3時間毎の1日6食を推奨しますが、忙しい現代人には難しい事が多いです。最低1日3食として、昼食の3時間前後に手軽に摂れるプロテインやナッツなど挿入できると良いです。特に昼食から夕食が8時間以上空いてしまう場合は、間食にプロテインなどを2回挿入しても良いです。なるべく空腹の状態を作らないように意識しましょう。(プロテインの摂取タイミングについてこちらで解説)(食事回数を増やすメリットについてこちらで解説)
決めた摂取タイミングにお腹が空いていない時がありますが、その場合でも食べるべきです。身体には恒常性機能(ホメオスタシス)があり、食べなかったひずみが必ずどこかのタイミングで食欲として出てきます。それを防ぐためにも、食欲の状態に関わらず一定のタイミングで食事を継続する事が大事です。また、昨日余分に食べ過ぎてしまったから、その分を今日減らすという考えはアリです。トータルバランスを意識していきましょう。
<食事制限を続ける秘訣>
どんな理由であれ続かなければ、減量目標は達成できません。苦しまず続けるためには、体も心も定期的にリフレッシュが必要です。例えば、何かの記念日で贅沢な食事をしたい、この日は仕事の付き合いで飲食しなければならないなどあると思います。もちろん、これが連続すると本末転倒ですが、1~2週間に1回程度で、他の通常日が徹底できていれば、減量に差支えありません。
なんとなく食べたいから食べてしまうのではなく、何でも食べて良い日を前もって設定しておくことが減量を成功させるポイントです。その日のため、今を頑張ることが必ず良い結果につながります。
<1日の食事例>
最後に筆者の1日の食事例(低糖質食)をご紹介します。食事量が多いように感じるかもしれませんが、あくまでご自身のPFCバランスに合った食事量で考慮してください。
時刻 | 食事内容 | 説明 |
---|---|---|
6:30 | 納豆、卵と味噌汁、野菜サラダ(アマニ油をかけて)、無糖オイコス、ブラックコーヒー(MCTオイル10g、イヌリン3g) (食後サプリメント) ・マルチビタミン&ミネラル ・ビタミンC、D、E ・フィッシュオイル | MCTはケトーシス状態を保つ他に吸収・消化が早く1時間30分ほどで血中ケトン体濃度を最高値まで上げるため、トレーニング前に合わせて摂取します。 脂質の酸化(動脈硬化の原因)を抑えるため、ビタミンEとCは必ず摂取します。 |
8:00 | (トレーニング直前) カフェイン200mg アルギニン5g (トレーニング中) EAA30g | ウェイトトレーニングを実施することで、よりグリコーゲンを枯渇させケトーシスを維持します。 ケトーシス中のカフェイン摂取は血中ケトン体濃度を高く維持できます。(脂肪燃焼を促進します) 但し、カフェインの摂り過ぎには気をつけましょう。特に女性の場合は生理痛など悪影響の可能性があります。 |
10:30 | ホエイプロテイン、MCTオイル10g | トレーニング後、血圧が落ち着いたらプロテインとエネルギー回復のためMCTを摂取します。 |
12:00 | ポークステーキ(オリーブオイルで加熱)、アボカド半分、バナバ茶(シナモン小さじ1杯、イヌリン3g) (食後サプリメント) ・マルチビタミン&ミネラル ・ビタミンC ・フィッシュオイル | イヌリンは食前か食事と一緒に摂取します。ケトーシス中は腸内環境の改善を常に心がけることが大事です。 ケトーシスを長期に行うとインスリン感受性が弱まる可能性があるため、バナバ茶やシナモンを摂取することでインスリン感受性を高めるように意識しています。 |
16:00 | ホエイプロテイン、MCTオイル10g、ナッツ | 1日のタンパク質を十分摂取するにはプロテインが便利です。プロテインバーも1つの手段ですが、良質な脂でないことも多いので、やはりプロテインパウダーが便利です。 |
20:00 | サーモンの刺身、アボカド半個、野菜サラダ(アマニ油をかけて)、バナバ茶(イヌリン3g) (食後サプリメント) ・マルチビタミン&ミネラル ・ビタミンC | ケトーシス後期からはある程度糖質量を増やしてもケトーシス状態を維持できるため、夕食に玄米100g(糖質35g)など低GIの炭水化物を入れても良いです。 |
22:00 | ホエイプロテイン、ナッツ | 就寝前にプロテインを摂取します。長時間のアミノ酸保持のため、ソイやカゼインのプロテインをお勧めします。 ナッツは腹持ちも良いので、空腹感を紛らわせながら就寝します。 |